ストレスからくる不調は専門家でも治せない?

ストレスも考え方次第で身体への影響が変わってくるということはわかりましたが、それでも何らかの不調が顔を出すことはあります。そういうときは、専門家に相談したほうがいいのではないか…という場合も、もちろんあります。

しかし、一口に専門家といってもいろいろな人がいます。ざっと挙げるとこんな人たちがいます。

●精神科医
●心療内科医
●心理カウンセラー
●臨床心理士

です。心の問題の治療をする、という点では共通しているのですが、心の扱いや、出来ることは大きく違っているのです。

精神科医は文字通り、医師国家試験に合格したお医者さんです。診察を受けにきた人に何らかの精神疾患があると判断したら、検査や投薬などの治療行為をします。

心療内科医もお医者さんですが、精神科医とは扱う領域が異なります。精神科医が精神疾患そのものを診断しますが、心療内科医は、ストレスからくると思われる体の不調や病気を治療します。

心理カウンセラーは民間の資格をとった人がなれます。医者とちがい、医療行為は一切できません。時間をかけて、話をじっくり聞き自立の手助けをします。

臨床心理士も医者ではありませんから、医療行為はできません。主な活動は検査です。知能検査や性格検査をして、病気の予測をし、病院を紹介するということも行います。民間資格ですが、大学院を卒業していること、精神医学を学んでいることが資格取得の条件です。

どれも必要な役割ではあるのですが、やることが見事にばらばらです。一体、どこへば解決できるのでしょうか?

一ついえるのは、どれも根本的な治療にはならないということでしょうか?やはりそれだけ心を扱うというのは難しいということなのでしょう。
民間のストレス解消方やリラクゼーションもいろいろあります。ヨガ、アロマ、マッサージ…挙げていくとキリがありません。逆に、それだけストレスに悩まされている人が多いにも関わらず、根本的な解決策がないことの現れのようでもあります。

ストレスで苦しいときに第三者の助けを求めるのは、悪いことではありません。むしろ、一人で抱え込むほうが危険な場合もあります。しかし、医療機関やリラクゼーションを利用するまえに確認しておいたほうがいいことがあります。

それは、自分の問題を他人に解決してもらおうとしていないか?ということです。問題解決を他人に丸投げ、人任せにしようとしていないか、ということです。

お医者さんに診てもらったり、カウンセラーに話を聞いてもらったりすれば、それで一時的に救われたり、楽になったりはするかもしれません。しかし、根本的な問題解決にはなっていません。ストレスの元を根本的に解決しようと思わなければ、問題はそのまま放っておかれることになって、消えてなくなることはありません。

お医者さんもカウンセラーも、所詮は他人です。サポートはしても解決はしてくれないのです。問題解決の一助にすぎないということを割り切らないと、よけいに苦しいことになるかもしれません。

ストレスへの考え方を見直そう!

充実した人生を送りたいなら、ストレスはさけられない。頭ではわかっていても、実際にストレスの多い環境に身を置いて、本当に自分を保っていられるか自信がない…。なにかいい方法はないものでしょうか?ストレスに対応するためには、マインドセットが重要になってきます。英語でmindsetと表記します。和訳すると、人の固定された考え方、物の見方、習慣ということになります。

ストレスにはコルチゾールやデヒドロピアンドロステン(DHEA)というストレスホルモンが関係しています。コルチゾールは糖代謝や脂質代謝を助け、体や脳のエネルギーを使いやすくする作用があり、ストレスを感じたときには関係の無い機能を抑える役割をもっています。

DHEAは、ストレスの経験を通して脳が成長するのを手助けし、コルチゾールの作用を抑制し、治癒能力、免疫機能を高める効果があります。この二つのうち、どちらが優位に働くかで、身体に及ぶストレスの影響が違ってくるのです。とくに長期的なストレス、慢性的なストレスに大きく影響します。

コルチゾールの量が多いと免疫機能が低下したり、うつを発症する可能性があります。DHIAが多くなると、うつや心臓病など、ストレスからくる病気にかかるリスクを軽減させます。

コルチゾールに対してDHEAの割合が高くなると、ストレスに対する抵抗力が強くなり、粘り強く頑張りとおすことができるのです。コルチゾールに対するDHEAの割合がストレス反応の成長指数と言われています。

じつは、ストレスに対するマインドセットを変えるだけで、コルチゾールとDHEAの量が変化することが実験でわかっています。

被験者を二つのグループに分け、就職の模擬面接をうけてもらいます。面接を受ける前に、一つのグループにはストレスはいかに健康に悪いかを説明するビデオを見せ、もう一つのグループには、ストレスは実はよい効果があるというビデオを見せます。面接が終わったあとで、被験者のストレスホルモンの量を調べました。

すると、ストレスのよい影響を説明したビデオを見たグループのDHEAは、ストレスは健康に悪いと説明したビデオを見せたグループより高い割合をしめしたのです。

マインドセットは誰にでもあるもので、それ自体はいいものでも悪いものでもありません。しかし、マインドセットは知らず知らずのうちに、あなたの考え方や行動に影響を与えるものです。『ストレスは体に悪い』と思い込んでいたら、ストレスを避けるために、問題解決をのための努力を怠ったり、ストレスを紛らわすためにアルコールやギャンブルにのめりこんでしまうなど、人生に様々な問題をかかえてしまう可能性があります。

しかし、『ストレスにはよい面もある』ということを認識していれば、ストレスの元になる問題を解決しようと努力したり、新しい情報や知識を学ぶ、成長するチャンスと捕らえることができるなど、ストレスを恐れずに行動することができるようになります。いま、あなたが抱えているストレスも、ただつらいと考えるよりも、新しいスキルや問題解決方を身に着けるチャンスと考えれば、それほど苦にはならないのではないでしょうか。

充実した人生にはストレスがつきもの

ストレスは極力避けたほうがいいもの、ストレスを感じる環境にはなるべく身を置かないほうがいい。というのがストレスの常識でした。

しかし、ストレスのまったくない生活は寿命を縮めるという調査報告があるのをご存知ですか?え?逆じゃないの?と思うかもしれません。しかし、事実です。

ある調査では、アンケートに『非常に退屈している』と答えた40代の男性を20年にわたって追跡調査しました。すると、心臓発作で死亡するリスクが2倍以上になる、という結果が出たのです。過去には定年退職した男性は、平均寿命が寿命が以外と短いという報告もありました。

毎日忙しすぎて、ストレスがたまる一方だと思っている人にはちょっと意外かもしれません。しかし、ストレスを避けようとすると、さらに新たなストレスが生まれていくこともわかっているのです。どういうことでしょうか?

ストレスを感じるときというのは、その人の人生において重要な局面に直面していることが少なくありません。ある大学の心理学の教授はこのことを『エベレスト斜面で過ごす寒くて暗い夜』と表現しています。

独立して事業を始める、親になるなど、人生には困難なことがいろいろと待ち受けています。そのことは、私たちはは多かれ少なかれ認識しています。しかし、避けて通りたくても、その問題が消えてなくなってくれることはありません。寒くて暗い夜をじっと耐え忍ばなくてはいけないのです。しかし、そこに意義を見出せたら、耐えることは不可能ではなくなるはずです。

消防隊員や、山岳救助隊など人の命を救うことを仕事にしている人は、厳しい職場環境にも関わらず、仕事がつらいからといって退職する人はほとんどいないといいます。これはきっと、仕事に意義と誇りを見出しているからなのでしょう。

ギャラップという会社をご存知ですか?アメリカに本社を置く世論調査とコンサルティング業務を行う会社で、民間世論調査のさきがけであり、この会社のおこなう世論調査は『ギャラップ世論調査』といわれ、世界的に高い信頼を得ています。

この会社が121カ国、12万人以上の人に『昨日、大きなストレスを感じたか?』という質問をしました。その質問をもとに、各国のストレス度数を算出したのです。結果は、平均は33%、最上位はフィリピンの67%、アメリカは43%。最下位はモーリタニアの5%でした。

研究者が次に調査したのは、ストレス度数が幸福度やGDPや平均寿命にどれくらい関連しているか?ということでした。

結果は意外や意外、ストレス度数の高い国ほど平均寿命が長く、GDPが高かったのです。また、ストレス度数が高い国では、幸福度や人生の満足度も高かったのです。これは研究者たちの予想を大きく裏切る結果でした。

別の機関の調査では、『自分は生きがいのある人生を送っている』と思っている人は、大きなストレスを感じる経験を多く乗り越えていることがわかったのです。今現在、おおきなストレスを感じている人も同様でした。

ある目標を達成しようとすれば、ストレスは避けて通れない問題です。意義のある人生を送ろうとするなら、ストレスは避けられないとして、受け入れたほうがよさそうです。

ストレスはその人の価値観に左右される

こうした、大きなストレスを乗り越えることができるのは、その人が持っている価値観も大きく影響しています。震災に遭ったことで、価値観が大きく変わった人もいると思います。1990年代のある海外の大学の研究では、こんな結果が報告されています。

この実験では大勢の大学生に協力してもらい、休暇の間に日記をつけてもらいました。大学生は二つのグループに分けられ、一つのグループは自分にとって一番大切な価値観と、自分の価値観に結びつく行動について書いてもらいました。もう一方のグループには、その日のよい出来事を書くように指示しました。

休暇がおわり日記を回収し、学生たちがどのように休暇をすごしたかを聞き取り調査しました。さらに、回収した膨大な日記を綿密に調査したのです。その結果、自分の価値観について日記を書いた学生は、健康状態、精神状態も良好なことがわかったのです。休暇の間にストレスを感じていた学生ほど、日記の効果が大きかったこともわかりました。

休暇の中で、面倒だと思っていたことや、家族のことでわずらわしいと思っていたことも、自分の夢をかなえるための一歩になる、家族への愛情表現としての行動だと思えるようになったのです。

価値観を紙に書いて明確にするという作業は単純ではありますが、ストレスを感じた経験の考え方を変え、対応能力を向上させるという作用があることがわかったのです。紙に書くだけでこれほどの効果があるなら、やらない手はありませんよね?

価値観とは、日ごろ自分が大切におもっていることが反映されています。日記の実験を行った同じ大学で、今度は自分の価値観を紙に書いて、それをキーホルダーに入れて持ち歩くように指示しました。ストレスを感じる環境になったら、それを見て、自分の価値観を思い出すようにしたのです。

効果はてきめんでした。キーホルダーを身に着けた人は、困難な状況に立ち向かう勇気がもてたのです。例えば、夫が初期のアルツハイマーという診断を受けた夫婦がいました。夫婦はそれぞれのキーホルダーに自分が一番大切にしている価値観を紙に書いていれました。妻は『忍耐』夫は『ユーモア』と『誠実』でした。

それから一週間、妻は何かあるたびに『忍耐』を見てそれを実行しました。ある日、夫が携帯をなくしましたが、なんと、冷蔵庫に入っていたのです。見つけたのは妻のほうです。夫は『そんなところに置いた覚えはないんだけどなあ』とおどけてみせました。夫の『ユーモア』のおかげで、二人は深刻な事態を回避できたのです。

ただ、注意しなければならないことがあります。その価値観は本当に自分のものか?ということです。私たちは身近にいる人、例えば親や会社の同僚などからつねに影響を受けています。『いい大学に入って、一流企業に入る』とか、『勉強で一番になる』などは、無意識に自分以外の第三者の目を気にしている可能性があります。

実は人間関係のストレスは、このような『人に良く思われたい』『この人にほめられたい』というとらわれから来ていることが多いといわれています。他者の価値観を自分の価値観と勘違いしてしまっているのです。

自分の価値観にしたがって生きているはずなのにストレスを感じたら、本当に自分の価値観なのか、注意する必要がありそうです。

1 2 3 4 5