ストレスに強い、弱いとはどういうことなのか?

世の中には、上司に罵倒されても、数分後にはケロリと立ち直れる人がいます。体が不自由になるほどの交通事故にあったり、子どものころに親からひどい虐待を受けても、立派な社会人になり、同じような境遇の人たちに救いの手を差し伸べるような人もいます。一方で、つらい過去をずっと引きずったままつらい人生を送っている人たちもいます。

この人たちの違いはどこからくるものなのでしょうか?これは、人によってレジリエンスに差があることからきています。レジリエンスは、英語でresilienceと表記します。日本語では、『精神的回復力』『復元力』『再起力』などと訳されますが、心理学では訳さずにレジリエンスと表記するのが一般的です。(レジリアンスという表記もある)

この概念に注目があつまりはじめたのは1970年代ころからといわれています。貧困の家庭で育ったり、親を失って孤児になったりした子どもの成長過程を追跡調査していく過程で、不利な状況にあっても自力で克服して幸せな家庭を気付く人もいれば、ずっと不幸な人生を送っている人もいたのです。

この差は一体どこからくるものなのか?という研究が始まりました。そして、逆境を乗り越えた人たちには、共通した傾向があることがわかってきたのです。それは、厳しい環境の中でも、ネガティブなことにばかり目を向けないで、ポジティブな面を見出している、ということです。

ストレスに強いというのは、逆境をものともしない鋼のような精神をもつことのように思われがちですが、レジリエンスは、そうではありません。失敗を繰り返しても、順調に成長しているとか、まあ何とかなるだろうという楽観性があるのです。また、感情のコントロールもうまくできるので小さなことで一喜一憂して、無駄なエネルギーを消費しなくてすむという利点もあるのです。

PTSGという言葉をご存知でしょうか?PTSDは、心的外傷後ストレス障害のことで、別名トラウマのことです。PTSGは、心的外傷後ストレス成長と訳されています。大きなストレスを経験した後の大きな成長をあらわす言葉です。PとGの一文字が違うだけなのに、意味合いは対極にあるといってもいいくらい違います。

比較的新しい概念で、一般の人にはなじみが薄いのですが、2011年の東日本大震災あたりから臨床心理士など心のケアに携わる仕事をしている人の間では、注目を浴びています。

震災をうけた後は、誰もがショックを受けて呆然自失となってしまいました。しかし、その後、目の前にある問題を受け入れて前向きな行動をとる人、問題を受け入れられずに余計にストレスを溜め込む人とに別れました。

震災のあと、怒りや悲しみを人にぶつける人は以外と少なかったそうです。それどころか、『命が助かった自分は幸運だった』『自分だけがつらいわけではない』といったことを落ち着いて話すひとが多かったようです。

中には家族も家もすべて失ったにもかかわらず、復旧のために貢献したいという人もいたのです。ストレスに強くなるというのは、心の成長に鍵があるのかもしれません。