歴史上の偉大な人物は、生涯精神的病と闘っていた人が意外と多いことが知られています。

アメリカ大統領エイブラハム・リンカーン、イギリスの首相チャーチル、インド独立運動の父ガンジーがうつ病をわずらっていたことは、メンタルヘルスを仕事にしている人にはよく知られた話です。

この三人の生きた時代は、戦争で世界中が大きな混乱に巻き込まれていた時期でもあります。こうした混乱の時代に対応するのは並大抵の能力ではできません。じつは、混乱時に実力を発揮した政治家は、精神的に健全な人は、あまりいないのです。

じつはうつ病には、現実を正しく認識する能力や、逆境からの反発力(レジリエンス)、他人との共感力や想像力を最大限に発揮させる力があることがわかっています。逆に精神的に健全なタイプの政治家は、平和なときには良いリーダーとなりますが、非常時に的確な判断や行動ができないことが多いのです。

例えば、前アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュは人間的には健全な考え方をもった人でしたが、9.11がおきたときのその後の対応は後々まで世界中から非難されることになりました。健全な精神の持ち主は、自分の誤りを率直に認めるのが苦手であり、一度権力を手にすると自分の力を過信し、事実認識を見誤ることが多いのです。これは政治家でなくても、思い当たることがある人が多いのではないでしょうか?

しかし、うつ病は、常に不安にさいなまれているゆえに、自分を過信することなく事実を見極めることができるという側面があるのです。しかし、こうした指導者が力を発揮できたのは、周囲の支えも大きかったことも否定できません。

うつ病でなくとも、大きなプレッシャーを感じながらも大成した人は他にもいます。中長あわせて200以上の小説を執筆したミステリーの女王、アガサ・クリスティは一度失踪事件をおこしています。原因は夫の浮気とされています。後に夫とは離婚し、夫は相手の女性と結婚します。

事件後、マスコミはアガサをしつこく追いまわし、ありもしない憶測を書きたてます。このことがアガサの心に深い傷を負わせます。彼女はこれをきっかけに大変なマスコミ嫌いになってしまいました。

しかし、その後も精力的に執筆活動をつづけ、『ABC殺人事件』や『そして誰もいなくなった』などの傑作を残しました。

うつ病を発症するほど頑張る必要はありませんが、これは強いストレスを克服することがレジリエンスを飛躍的に成長させることの証明ではないでしょうか?

上記に挙げた人はすでに故人ですが、現代の日本でも芸能人やプロのアスリートなど、強いプレッシャーを受けながら活躍している人はたくさんいます。インターネットで名前を検索すれば、こういった人たちのエピソードはあっという間に探せます。その中から自分に似たタイプの人を探して、その人の習慣を真似てみるとストレスに強くなる方法が見つかるかもしれません。