人助けは人を強くし、健康になれる

ストレスの『闘争・逃走反応』は人が進化する過程で、身を守るためにそなわった機能です。しかし、逃げるか、戦うかの2つだけで身を守ることは不可能です。じつは、ストレスを感じると他者へのいたわりや、共感が生まれることがわかってきています。どういうことでしょうか?

日本では東日本大震災、熊本大震災と立て続けに大きな地震がありました。こんな大きな災害にあったら、もう自分が逃げ出すのが精一杯で、人のことどころじゃない!と思うのが普通…と思いきや、実際にテレビに映し出されたのは震災にあった人々が助け合っている姿でした。

地震がおさまった後は、全国から続々とボランティアが集まりました。熊本大地震のボランティアには、東日本大震災や阪神大震災で被災した人も多かったようです。人は大きなストレスを感じると、体内にオキシントンというホルモンが分泌されます。別名『愛情ホルモン』『抱擁ホルモン』とよばれ、誰かと繋がりたいという欲求をおこさせる作用があります。

それだけではなく、『闘争・逃走反応』を防ぎます。例えば、地震で自分の子どもが家の下敷きになっていたら、親は何が何でも救い出そうとします。オキシントンは、危険をかえりみず、自分の大切なものを守ろうとする勇気をもたらします。これも、子孫を残すために進化の過程で身に付いたものです。

しかも、大きな災害や事故の後でなくても、日常で頻繁に人助けをしていると強いストレスを受けても健康を害することを防ぐことができることもわかってきました。

人助けは自己評価を高める作用もあります。ある研究者が仕事で時間に追われるプレッシャーを軽減する方法を研究していました。時間的余裕がないと、往々にしてストレスがたまりやすくなり、思わぬミスをしてしまうことがあります。

さんざん忙しい思いをさせた後で実験の参加者に自由時間を与え、一方には『好きなように時間をすごしてください』といい、もう一方には『人助けのために時間をつかってください』と支持しました。その後で、自分の自由に使える時間をどれくらい持っているか?いつもどれくらい時間がないと感じているか?という二つの質問をしました。

すると、時間を人助けに使った人たちのほうが、時間がないという感覚がうすいという結果がでました。さらに、自分の能力や仕事についても自身がつき、仕事に対するプレッシャーが軽減されたのです。

意外ですが、忙しいときほど人助けをしたほうが、余裕をもつことができるという結果がでたのです。

ストレスの反応にはいろいろあります。つらい状況にあるときは、ついつい自己防衛におちいるあまり、周りの人のことを考える余裕がないときもあります。これは『闘争・逃走反応』がおきているときです。

しかし、こういう時にこそ人の役に立つことをすれば、かえって自分のためになる、ということを思い出しましょう。どんな小さなことでもいいから、人のためにできることを考えましょう。自分のためにばかり行動していたら、かえって反発を招いてしまいます。